たいてい呟いているが、たまに叫んだり謝ったり
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もう先月の話になりますが、ウラノ様から、とあるネタ画像を頂きました。
何と、ソウルキャリバーのキャラクタークリエイションの機能で『奴』を作って下さったんですよ。
CPU同士で対戦すると、そいつはコエンマ様やぼたんちゃんが相手だと必ず一勝二敗で負けるくせに、閻魔大王には遠慮なくパーフェクト勝ちしたとの事です。
偶然とはいえ、何らかの思念(コエぼた礼賛思想ともいう)が作用したとしか思えませんwwwwwwメール見た時、本気で爆笑でしたwwwwホントありがとうございますウラノ様!!
ちなみにセリフまで『勝負は時の運さ』『じゃあ僕は行かせてもらうよ』『本気でやるつもりなのかい?』などと、それっぽい口調だったらしいです。
さて、拙宅『朔眠』のお客様なら、『奴』とは誰の事かお分かり頂けたでしょう…
そうして出来た朔眠の外伝(蛇足ともいう)『こんな寒い日には』です。
興味がありましたら下記のタイトルから入ってご覧下さいまし。
何と、ソウルキャリバーのキャラクタークリエイションの機能で『奴』を作って下さったんですよ。
CPU同士で対戦すると、そいつはコエンマ様やぼたんちゃんが相手だと必ず一勝二敗で負けるくせに、閻魔大王には遠慮なくパーフェクト勝ちしたとの事です。
偶然とはいえ、何らかの思念(コエぼた礼賛思想ともいう)が作用したとしか思えませんwwwwwwメール見た時、本気で爆笑でしたwwwwホントありがとうございますウラノ様!!
ちなみにセリフまで『勝負は時の運さ』『じゃあ僕は行かせてもらうよ』『本気でやるつもりなのかい?』などと、それっぽい口調だったらしいです。
さて、拙宅『朔眠』のお客様なら、『奴』とは誰の事かお分かり頂けたでしょう…
そうして出来た朔眠の外伝(蛇足ともいう)『こんな寒い日には』です。
興味がありましたら下記のタイトルから入ってご覧下さいまし。
朔眠小咄『こんな寒い日には』
人界は四季が巡って冬になれば雪が降るが、霊界には四季というものは無い。
しかし今、審判の門の屋上気象計は氷点下2度、北の風が1メートル、昨日からの降雪で50センチを超える積雪量を計測し、連なる建物と周囲の森や野原は雪布団を被っている。
それは何故か?
死者を迎え入れる審判の門の周辺だけは、人界の、それも何故か日本の暦に合わせて四季折々の雰囲気を出している為である。
季節感も、そして昼夜の区別もない、ただ白い霞のかかった世界はあまりに殺風景で、霊界へ導かれた死霊達の精神衛生上よろしくないから…というのが霊界にも四季が作られた理由であるが、閻魔大王の真意は謎だった。
霊界の自然を司るのは精霊の王の娘達、風と水と大地の三女神。
冬を表現する為、風の精霊が北風を吹かせ、水の精霊が雪を降らせ、大地の精霊が野原を凍土に変え、森の木々の葉を枯らす…そうやって『飾り付け』をしているのである。
しかし、人界が暖冬だというのに妙な対抗意識を燃やした精霊達が、この冬は張り切り過ぎた。
あまりの寒さに暖房はフル回転、電力消費量は過去最高を記録し、ついに霊界の発電所は壊れ、霊界全土が停電したのである。
幸い、すぐ予備の発電炉を稼動させたので大きな問題は発生しなかったかに思われたのだが…
問題は生じていた。
「ギャーーーー! セーブデータぁぁ!!」
審判の門の東の館、地下室。
朔夜はゲームのコントローラーを取り落とし、真っ黒な画面に向かって叫んだ。 停電時のお約束、データ未保存の悲劇である。
一緒にゲームをしていたコエンマとぼたんは、次にどんな行動…即ち、八つ当たり…に出るか分からないその吸血鬼から距離を取った。
それに、足を突っ込んでいたコタツも停電で切れてしまったので、冷えてくるばかりだったからだ。
「館は別電源で、自動復旧せんのだった…どれ、配電盤を見て来るか」
「お…お茶、アタシはお茶を淹れて来ます!」
そそくさと部屋から逃げ出そうとするコエンマとぼたん。
その時、異変は起こった。
真っ暗だった部屋が、いきなり白く塗り込められたように明るくなった。
思わず眼を瞑る3人、そして…
「これも停電時のお約束か…?」
「あるあるあ…ないない!!」
「ここ、どこ?」
どう見ても、さっきまでやっていた格闘ゲームの闘技場である。
そこに、3人は呆然と立っていた。
「アタシ達、ゲームの中に入っちゃったのかい? あり得るの、そんな事が…」
「聞いた事がある。 本の登場人物になって実体験させる能力…文章の中に入れる力」
「『文車妖妃』の能力だな…今はもう絶滅した付喪神だが。
文車なんて今の人間は使わんし、手紙は電子メールに取って変わられたし」
稀少な妖魔類は、その魂魄の芯を一粒の数珠玉に封じ込めた形で、妖魔生命研究所に資料として保管されている。
文車妖妃はそうした資料として残るのみの、すでに伝説の存在だった。
「何かの拍子に流出しちゃったんでしょうか…もしかするとさっきの停電で」
「電気の通わぬ空っぽの電線を伝って来て、朔夜のゲーム機に取り憑いたようだな」
この状況の原因を考察し、納得のいく仮説を立てようとする三人。
そして朔夜は仮説を前提に、更に予想される被害をコエンマに提言する。
「だとすると、文車妖妃だけではなく、他にも流出した魂魄があるかもしれません。
僕が屠ったものも、いくつか保管されていた筈…粉微塵にしても体液の一滴でも水と混ざれば増えまくる液体生物とか、敵に当たるまで追い回す悪魔の弾丸とか、喰った生物の能力を自分のものとして使う鬼とか、疫病神とか」
「まず回収は無理だな…妖魔の魂魄なら、魔界に引き戻されて食物連鎖の下層へ組み込まれ、消費されていく。
だが、それで良いではないか。
研究の為とはいえ、魂魄芯のみを保管しているという状態が異常なのだから。 魔界に還すならそれで良い。
人間に被害が及ばなければ、調査課分室の出る幕ではない」
「は…そういう事ならば、異存はありません」
住み分けと共存がコエンマの基本理念であり、霊魂から抉り出した芯の資料の事を狂科学者のコレクションと断じる朔夜もコエンマの言葉に頷いた。
後に、その流出した魂魄芯が人間に取り込まれて全く新しい異能者が生まれる事を、彼らはまだ知らずにいたが…それはまた、別の話である。
「それより、どうやってここから出るんですか?」
ぼたんが不安げな顔でコエンマを、そして朔夜を見る。
「そんなもん、次元間瞬間転移であっという間じゃ。 安心せい!
さっさと帰れば、うまくすると文車妖妃の魂魄芯を捕まえられるかもしれん。
研究所に返してやって、恩を売るか」
「魔界に還すのが良いと言ったのと同じ口がそういう事を言うんですかコエンマ様。
むしろ僕が食べていい? 物語の中に入れるなんて面白い力、研究所に閉じ込めるのも下等妖怪の餌にするのも勿体無いし…
…あれ? …『扉』が発動出来ない…」
「何じゃと? 術式の組み上げ方をド忘れしたか朔夜…
……あ、ありゃりゃ? …ワシもじゃ…転移法陣が展開出来ん!」
「えええ!? じゃあ、出られないんですか!?
もしかして、コエンマ様も朔夜も、捕まえて恩を売るだの食べるだの言うから、文車妖妃の魂が怒ったんじゃないですか!?」
「魂魄芯に自我は無い、けれど…文車妖妃の能力の特性として、物語の結末まで行かないと…つまり命題を達成しないと出られない可能性はあるかも…
…ん?」
「…何コレ!? なんか僕とぼたんが戦う事にされてる!!」
「何で!?」
対戦モードでゲームが動き出していた。
闘技場の周囲に体力を示すゲージが現れ、ゴングが鳴る。
「ちょっと待て『ROUND 1 FIGHT!!』じゃないだろ!!」
「キャンセル!キャンセルボタン押して!」
慌てる朔夜とぼたんが、とりあえず上空に向かって叫ぶ。
しかし闘技場には勇ましい音楽が流れ、どうしても二人は戦わなければならない空気になっていた。
「しょうがない、朔夜、うまく負けろよー ぼたん頑張れー」
「コエンマ!! 他人事だと思って!」
「しょうがない、朔夜、我慢してね!!」
「何で乗り気になってんだ、ぼたん! 痛ッ! やめろ…やめろと言った!」
つい振り払った手、突き飛ばされてリングアウトするぼたん。
「あ」
「ふぇーん…朔夜ヒドイー!」
「ご…ごめん、わざとじゃ…勝負は時の運さ。
負けたからって泣かないでよ、ぼたんー…」
怪我はしないようだったが、それは全年齢対象で流血等の表現の無いゲームである事が幸いしたらしい。
「んもう…次は負けないよ!」
「…本気でやるつもりなのかい?
やめてよね、普通に戦ったら、ぼたんが僕に敵うわけないじゃないか」
「うわーすごいムカつくよ朔夜そのセリフ」
「どこのキラきゅんじゃ、おのれは…ぼたんを怒らせたら怖いぞー」
第2ラウンドのゴングが鳴った。
ぼたんは霊界案内人の乗り物である櫂を取り出すと、それを振り回して突進してきた。
意外にも見事な棒術、それもさる事ながら、着物の裾から覗く脚に一瞬眼を奪われた朔夜は防御が遅れ、櫂で強かに殴打された。
「痛い痛い痛い! ちょっと! ぼたん!! 痛いよ!!」
「案内人養成学校時代、櫂乗りの女王と呼ばれたアタシの実力をナメるんじゃないよッ!!」
「初めて聞いたよそんな経歴!! ていうか棒術と関係な…うわー!!」
ぼたんが相手では下手に迎撃も出来ない。
朔夜は殆ど無抵抗で殴られ続け、第2、第3ラウンドを落として1勝2敗という結果を甘んじて受けた。
その後もコエンマと対戦する羽目になり、負けなくてはならないという義務感と負けに対する単純な悔しさで、朔夜の機嫌は右肩下がりに悪くなっていった。
「もう帰りたい…わざと負けるのストレス溜まるんだよ…」
「せっかくお前をボコってストレス解消しとるのに、そうそう帰るかアホが」
「コエンマ様、それは言い過ぎですよ…」
「わざと負ける…それ即ち『嘘』である!! 儂は嘘は好かぬ…懲罰してくれるわ!!」
突然、天から降ってきた声に、三人は耳を疑った。
「閻魔大王…!?」「大王様!?」「親父ーーーー!?」
一条の光が差し、朔夜の前に豪奢なマントを着た厳つい男が現れたのである。
「吸血鬼よ、儂が次の対戦相手だ!」
「…声だけ似ている別人ですか?」
「いや、本人だ」
「随分とお痩せに…」
「息子の館は儂には小鳥の巣箱の如く狭いので、いつもの格好では玄関にすら入れぬのでな」
コエンマの父である閻魔大王は、普段は畏敬の眼差しで見上げられる巌のような巨大な姿ではなく、人間と同等の背格好に変化していた。
「停電は復旧したというのに、コエンマの館のみ灯りが消えたままなので気になって寄ってみたのだ。
どうせ地下だろうと入ったら、何故か其方らは格闘ゲームに取り込まれておるし…文車妖妃か、面白い」
「気付いたなら助けてください!! 何で大王まで取り込まれてるんですか!」
「まあ、折角の機会なので手合わせしようではないか、吸血鬼よ」
ガハハと豪快に笑い、剣を構える閻魔大王。
対する朔夜の眼は据わっていて、口元には薄く笑みが浮かんだ。
「もう頭にきた…一本勝負でお願いします。
僕は本気で行かせてもらう」
「改心したのか?」
「むしろキレてる!! 大王様、逃げた方が!!」
「よーし、朔夜ー頑張れー!!」
「コエンマ様! めっ!!」
痛みは感じるが怪我はしない…ゲームである事が幸いだった。
朔夜は存分に暴力を振るい、閻魔大王を叩きのめしたのであった。
「手加減せんか!」
「わざと負けるのは嘘だから駄目なんだろ、親父」
『主人公』に設定されていた朔夜が勝利を収める事が『命題を達成した』事になったらしい。
ゲームに取り憑いた文車妖妃の力は解除され、魂魄は何処かへ飛び去った。
そして、4人は無事に元の朔夜の部屋に戻って来ていた。
「お茶が入りましたー!」
「蜜柑取ってきました…あと林檎も剥いた。 茶色くならないうちに食べよう。
…まだやってるんですか」
「大王様、負け負けですね…」
ゲームの中から脱出し、館の電力供給も復旧したので用事は済んだ筈だったが、閻魔大王はそのまま朔夜の部屋のコタツから離れず、コエンマとゲームを続けていた。
(早く帰らないかなぁ、大王…)
(いいじゃないさ、大王様も親だもん。 たまにはコエンマ様と遊びたいんだよ)
(…うー…)
(朔夜、コエンマ様を取られたからって拗ねないの)
(僕は拗ねてなんか…じゃあぼたん、あの親子は放っておいて、デートしない?)
(何でそこでそういう話になるんだい)
そっと次の間に退いて、ヒソヒソ声で話す朔夜とぼたん。
拗ねていないと言いつつ明らかに拗ねている朔夜を宥め、困った顔で笑うぼたんは、ドアの隙間からふと部屋を覗く。
「かかか、やはり寒い日はコタツで蜜柑でも食べて茶を飲みつつゲームやるのが一番じゃ」
「コエンマ、手加減しろ!」
また雪が降り出したらしく外は静かだったが、この地下室は暖かだった。
―了―
人界は四季が巡って冬になれば雪が降るが、霊界には四季というものは無い。
しかし今、審判の門の屋上気象計は氷点下2度、北の風が1メートル、昨日からの降雪で50センチを超える積雪量を計測し、連なる建物と周囲の森や野原は雪布団を被っている。
それは何故か?
死者を迎え入れる審判の門の周辺だけは、人界の、それも何故か日本の暦に合わせて四季折々の雰囲気を出している為である。
季節感も、そして昼夜の区別もない、ただ白い霞のかかった世界はあまりに殺風景で、霊界へ導かれた死霊達の精神衛生上よろしくないから…というのが霊界にも四季が作られた理由であるが、閻魔大王の真意は謎だった。
霊界の自然を司るのは精霊の王の娘達、風と水と大地の三女神。
冬を表現する為、風の精霊が北風を吹かせ、水の精霊が雪を降らせ、大地の精霊が野原を凍土に変え、森の木々の葉を枯らす…そうやって『飾り付け』をしているのである。
しかし、人界が暖冬だというのに妙な対抗意識を燃やした精霊達が、この冬は張り切り過ぎた。
あまりの寒さに暖房はフル回転、電力消費量は過去最高を記録し、ついに霊界の発電所は壊れ、霊界全土が停電したのである。
幸い、すぐ予備の発電炉を稼動させたので大きな問題は発生しなかったかに思われたのだが…
問題は生じていた。
「ギャーーーー! セーブデータぁぁ!!」
審判の門の東の館、地下室。
朔夜はゲームのコントローラーを取り落とし、真っ黒な画面に向かって叫んだ。 停電時のお約束、データ未保存の悲劇である。
一緒にゲームをしていたコエンマとぼたんは、次にどんな行動…即ち、八つ当たり…に出るか分からないその吸血鬼から距離を取った。
それに、足を突っ込んでいたコタツも停電で切れてしまったので、冷えてくるばかりだったからだ。
「館は別電源で、自動復旧せんのだった…どれ、配電盤を見て来るか」
「お…お茶、アタシはお茶を淹れて来ます!」
そそくさと部屋から逃げ出そうとするコエンマとぼたん。
その時、異変は起こった。
真っ暗だった部屋が、いきなり白く塗り込められたように明るくなった。
思わず眼を瞑る3人、そして…
「これも停電時のお約束か…?」
「あるあるあ…ないない!!」
「ここ、どこ?」
どう見ても、さっきまでやっていた格闘ゲームの闘技場である。
そこに、3人は呆然と立っていた。
「アタシ達、ゲームの中に入っちゃったのかい? あり得るの、そんな事が…」
「聞いた事がある。 本の登場人物になって実体験させる能力…文章の中に入れる力」
「『文車妖妃』の能力だな…今はもう絶滅した付喪神だが。
文車なんて今の人間は使わんし、手紙は電子メールに取って変わられたし」
稀少な妖魔類は、その魂魄の芯を一粒の数珠玉に封じ込めた形で、妖魔生命研究所に資料として保管されている。
文車妖妃はそうした資料として残るのみの、すでに伝説の存在だった。
「何かの拍子に流出しちゃったんでしょうか…もしかするとさっきの停電で」
「電気の通わぬ空っぽの電線を伝って来て、朔夜のゲーム機に取り憑いたようだな」
この状況の原因を考察し、納得のいく仮説を立てようとする三人。
そして朔夜は仮説を前提に、更に予想される被害をコエンマに提言する。
「だとすると、文車妖妃だけではなく、他にも流出した魂魄があるかもしれません。
僕が屠ったものも、いくつか保管されていた筈…粉微塵にしても体液の一滴でも水と混ざれば増えまくる液体生物とか、敵に当たるまで追い回す悪魔の弾丸とか、喰った生物の能力を自分のものとして使う鬼とか、疫病神とか」
「まず回収は無理だな…妖魔の魂魄なら、魔界に引き戻されて食物連鎖の下層へ組み込まれ、消費されていく。
だが、それで良いではないか。
研究の為とはいえ、魂魄芯のみを保管しているという状態が異常なのだから。 魔界に還すならそれで良い。
人間に被害が及ばなければ、調査課分室の出る幕ではない」
「は…そういう事ならば、異存はありません」
住み分けと共存がコエンマの基本理念であり、霊魂から抉り出した芯の資料の事を狂科学者のコレクションと断じる朔夜もコエンマの言葉に頷いた。
後に、その流出した魂魄芯が人間に取り込まれて全く新しい異能者が生まれる事を、彼らはまだ知らずにいたが…それはまた、別の話である。
「それより、どうやってここから出るんですか?」
ぼたんが不安げな顔でコエンマを、そして朔夜を見る。
「そんなもん、次元間瞬間転移であっという間じゃ。 安心せい!
さっさと帰れば、うまくすると文車妖妃の魂魄芯を捕まえられるかもしれん。
研究所に返してやって、恩を売るか」
「魔界に還すのが良いと言ったのと同じ口がそういう事を言うんですかコエンマ様。
むしろ僕が食べていい? 物語の中に入れるなんて面白い力、研究所に閉じ込めるのも下等妖怪の餌にするのも勿体無いし…
…あれ? …『扉』が発動出来ない…」
「何じゃと? 術式の組み上げ方をド忘れしたか朔夜…
……あ、ありゃりゃ? …ワシもじゃ…転移法陣が展開出来ん!」
「えええ!? じゃあ、出られないんですか!?
もしかして、コエンマ様も朔夜も、捕まえて恩を売るだの食べるだの言うから、文車妖妃の魂が怒ったんじゃないですか!?」
「魂魄芯に自我は無い、けれど…文車妖妃の能力の特性として、物語の結末まで行かないと…つまり命題を達成しないと出られない可能性はあるかも…
…ん?」
「…何コレ!? なんか僕とぼたんが戦う事にされてる!!」
「何で!?」
対戦モードでゲームが動き出していた。
闘技場の周囲に体力を示すゲージが現れ、ゴングが鳴る。
「ちょっと待て『ROUND 1 FIGHT!!』じゃないだろ!!」
「キャンセル!キャンセルボタン押して!」
慌てる朔夜とぼたんが、とりあえず上空に向かって叫ぶ。
しかし闘技場には勇ましい音楽が流れ、どうしても二人は戦わなければならない空気になっていた。
「しょうがない、朔夜、うまく負けろよー ぼたん頑張れー」
「コエンマ!! 他人事だと思って!」
「しょうがない、朔夜、我慢してね!!」
「何で乗り気になってんだ、ぼたん! 痛ッ! やめろ…やめろと言った!」
つい振り払った手、突き飛ばされてリングアウトするぼたん。
「あ」
「ふぇーん…朔夜ヒドイー!」
「ご…ごめん、わざとじゃ…勝負は時の運さ。
負けたからって泣かないでよ、ぼたんー…」
怪我はしないようだったが、それは全年齢対象で流血等の表現の無いゲームである事が幸いしたらしい。
「んもう…次は負けないよ!」
「…本気でやるつもりなのかい?
やめてよね、普通に戦ったら、ぼたんが僕に敵うわけないじゃないか」
「うわーすごいムカつくよ朔夜そのセリフ」
「どこのキラきゅんじゃ、おのれは…ぼたんを怒らせたら怖いぞー」
第2ラウンドのゴングが鳴った。
ぼたんは霊界案内人の乗り物である櫂を取り出すと、それを振り回して突進してきた。
意外にも見事な棒術、それもさる事ながら、着物の裾から覗く脚に一瞬眼を奪われた朔夜は防御が遅れ、櫂で強かに殴打された。
「痛い痛い痛い! ちょっと! ぼたん!! 痛いよ!!」
「案内人養成学校時代、櫂乗りの女王と呼ばれたアタシの実力をナメるんじゃないよッ!!」
「初めて聞いたよそんな経歴!! ていうか棒術と関係な…うわー!!」
ぼたんが相手では下手に迎撃も出来ない。
朔夜は殆ど無抵抗で殴られ続け、第2、第3ラウンドを落として1勝2敗という結果を甘んじて受けた。
その後もコエンマと対戦する羽目になり、負けなくてはならないという義務感と負けに対する単純な悔しさで、朔夜の機嫌は右肩下がりに悪くなっていった。
「もう帰りたい…わざと負けるのストレス溜まるんだよ…」
「せっかくお前をボコってストレス解消しとるのに、そうそう帰るかアホが」
「コエンマ様、それは言い過ぎですよ…」
「わざと負ける…それ即ち『嘘』である!! 儂は嘘は好かぬ…懲罰してくれるわ!!」
突然、天から降ってきた声に、三人は耳を疑った。
「閻魔大王…!?」「大王様!?」「親父ーーーー!?」
一条の光が差し、朔夜の前に豪奢なマントを着た厳つい男が現れたのである。
「吸血鬼よ、儂が次の対戦相手だ!」
「…声だけ似ている別人ですか?」
「いや、本人だ」
「随分とお痩せに…」
「息子の館は儂には小鳥の巣箱の如く狭いので、いつもの格好では玄関にすら入れぬのでな」
コエンマの父である閻魔大王は、普段は畏敬の眼差しで見上げられる巌のような巨大な姿ではなく、人間と同等の背格好に変化していた。
「停電は復旧したというのに、コエンマの館のみ灯りが消えたままなので気になって寄ってみたのだ。
どうせ地下だろうと入ったら、何故か其方らは格闘ゲームに取り込まれておるし…文車妖妃か、面白い」
「気付いたなら助けてください!! 何で大王まで取り込まれてるんですか!」
「まあ、折角の機会なので手合わせしようではないか、吸血鬼よ」
ガハハと豪快に笑い、剣を構える閻魔大王。
対する朔夜の眼は据わっていて、口元には薄く笑みが浮かんだ。
「もう頭にきた…一本勝負でお願いします。
僕は本気で行かせてもらう」
「改心したのか?」
「むしろキレてる!! 大王様、逃げた方が!!」
「よーし、朔夜ー頑張れー!!」
「コエンマ様! めっ!!」
痛みは感じるが怪我はしない…ゲームである事が幸いだった。
朔夜は存分に暴力を振るい、閻魔大王を叩きのめしたのであった。
「手加減せんか!」
「わざと負けるのは嘘だから駄目なんだろ、親父」
『主人公』に設定されていた朔夜が勝利を収める事が『命題を達成した』事になったらしい。
ゲームに取り憑いた文車妖妃の力は解除され、魂魄は何処かへ飛び去った。
そして、4人は無事に元の朔夜の部屋に戻って来ていた。
「お茶が入りましたー!」
「蜜柑取ってきました…あと林檎も剥いた。 茶色くならないうちに食べよう。
…まだやってるんですか」
「大王様、負け負けですね…」
ゲームの中から脱出し、館の電力供給も復旧したので用事は済んだ筈だったが、閻魔大王はそのまま朔夜の部屋のコタツから離れず、コエンマとゲームを続けていた。
(早く帰らないかなぁ、大王…)
(いいじゃないさ、大王様も親だもん。 たまにはコエンマ様と遊びたいんだよ)
(…うー…)
(朔夜、コエンマ様を取られたからって拗ねないの)
(僕は拗ねてなんか…じゃあぼたん、あの親子は放っておいて、デートしない?)
(何でそこでそういう話になるんだい)
そっと次の間に退いて、ヒソヒソ声で話す朔夜とぼたん。
拗ねていないと言いつつ明らかに拗ねている朔夜を宥め、困った顔で笑うぼたんは、ドアの隙間からふと部屋を覗く。
「かかか、やはり寒い日はコタツで蜜柑でも食べて茶を飲みつつゲームやるのが一番じゃ」
「コエンマ、手加減しろ!」
また雪が降り出したらしく外は静かだったが、この地下室は暖かだった。
―了―
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